残酷な結末

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(如月side) 「うっ、吐きそう…」 胃が大きくないのにオムライスがあまりにも美味しくて一皿丸々食べてしまった。 食べられたのは良かったのだがいつもと比べられない量に胃のキャパを大きくオーバーしてしまったようで今にも口からデミグラスソースが出てきそうだ。 「……全然余裕なんだけど」 吐きそうになっている裕也の隣で由衣はカルボナーラを食べた後にケーキも食べ追加でもう一つケーキを増やすか迷っていた。 同じような細さに身長なのに一体この身体のどこにそんなに入るんだろう。不思議だ。 「どこ行く?」 「パッーと買い物しよう!悲しい時はこれが一番!!!」 「よし!何軒でもついていく!!」 ショッピングモールの方に歩いていく由衣についていく。 ショッピングモールは初めて克也とデートできたあの時以来だけど殆ど変わっていなくて懐かしい気持ちになる。 ゲームセンターの前を通り色々あったな、と思い返す。 「どうしたの?なにかやりたいゲームでもある?」 「いや、なんでもない。それよりどの店から行く?」 東日本で一番大きいと言われているここは服屋だけでも何軒あるかわからない。 そんな中最上階の五階まで迷いなく上がったものだから行く店も決まっているんだろうと聞くとビックリすることを言われる。 「全部だよ。順番に見て降りていく!」 「…は?好みじゃないとことかあるだろ?」 途方もない買い物に一瞬クラリとする。 「そういうとこは見ないよ!ほら行くよ!!」 「はいはい、行きますよ、」 何軒でもついていく!と宣言してからそんなにたっていないのにもう撤回したい。 それでも目を赤くしていた由衣が楽しそうに買い物をしているのを見てホッとする。 何かいいものがあれば自分も買おうと服を物色する。 「これとこれ、どっちがいい?」 見せられたのはどう違うのかわからないほど似ているニットだった。 「どっちも買ったら?」 この店ごとポンっと買えるお金を余裕で持っている由衣が三千円前後のニットを真剣に悩んでいる姿は及川のような大きなグループの子供には見えなくてごくごく普通の男の子に見える。 「由依くんにはこれが似合うと思う」 さっき自分用を探していた時、由衣に似合いそうだなと思った服を由衣に渡す。 「じゃあこれにする!!」 さっきまであんなに悩んでいたのに裕也から渡されるとパッと見ただけでそれに決めてしまおうとする由衣を慌てて止める。 「さっき持ってたのは?」 「えーー裕也くんが選んでくれたのが一番いい!僕のことを考えてくれたんでしょ?これにする!」 え、いやでも、と口からは出るものの自分が選んだものに決めてくれて嬉しくてそれ以上止められなかった。 「じゃあ、それ僕が買うから由衣くんは僕に似合いそうなの選んでくれない?」 「え!なにそれ!!すごく楽しそうだね!」 ワクワクしている由衣が可愛くて裕也も楽しくなってくる。 「この店からにしよう。僕ももう一回見てみる」 同じ店の中ならコートとかを買わない限り値段は似たり寄ったりだ。 それから暫くすると由衣がこれに決めたと持ってきたのは白のモコモコのニットで裕也の手には薄いピンクのモコモコのニットがあった。 二人でまた目を合わして笑い合う。 「フフっ、これじゃあ由衣とお揃いじゃん!!」 「いいじゃん!お揃い!!しよう!!!」 近くにいた店員にこれ買ってすぐ着れるかを聞いている。 「え!今日!?着るの?」 「着るよ!!ほらお会計いこう!」 由衣がめちゃくちゃ楽しそうでそれもいいかと思う。 そういう裕也も克也とのお揃いはいくつかあるものの友達とお揃いは初めてで由衣には言ってないものの嬉しくて胸がドキドキしていた。 「よくお似合いです!お買い上げ、ありがとうございました!」 店員のお世辞を聞きながら店を出る。 「すっごく見られてるね?」 由衣も裕也も目を惹く容姿をしている。 そんな二人がお揃いのモコモコを着ていればそれはもう目立ちまくりだ。 克也と出かけている時も相当な数の視線を感じるがそれと一緒くらい見られている。 「恥ずかしい…」 裕也が両手で顔を隠すと由衣に片方の手を取られる。 「こうしてたらバカップルみたいじゃない?」 ペアルックで手を繋いで一人は顔が真っ赤なら恋人にしか見えないだろう。 手を繋がれて恥ずかしいのに由衣の手が温かくて裕也も握り返す。 「克也に嫉妬されちゃうな」 「えっ、気づかないだろ?」 どうだろ?とニヤニヤする由衣を見て多分気づかれるやつだなと思うが手を離すのはもったいなくて怒られるのを覚悟する。
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