第5章 符合

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2036年 都内某所 曹達の近所 オバサンたちが噂話をしていた。 オバサンA「あのご老人、また賞を取ったらしいわよ」 オバサンB「あら、そうなの?」 オバサンC「なんでも、あの人、著名な書道家らしいわよ………」 オバサンA「へぇー………」 オバサンB「そうなの、知らなかったわ………」 左吉の家 テレビがついていて、画面の中で、インタビュアーが、左吉にマイクを向けている。 インタビュアー「朱鷺さん、〇〇賞受賞おめでとうございます。これからの抱負を一言………」 パチン 男がテレビを消した。 その時、その家の電話が鳴った。 男は受話器を取った。 曹達「じっちゃん、ちょっと見てほしい物があるんだけど、今からそっちへ行っていいかな?」 男「あぁ、いいとも」 曹達「じゃあ、すぐ行くから」 電話はすぐに切れた。 男は、受話器を元に戻すと、ソファーに座り直した。 しばらくして、曹達が、その家にやって来た。 曹達「じっちゃん、早速だけど、この昔の書き付けみたいな物を見てほしいんだけど………」 じっちゃん………本名 朱鷺左吉(とき さきち)。有名な 書道家らしいが、俺にとっては、小さい子供のころから、知ってるタダの古文書好きのお爺さんに過ぎない。 左吉「どれどれ………」 左吉は、曹達の持ってきた書き付け?を熱心に見始めた。 曹達「何て書いてあるか分かる?」 左吉「まぁ、待て。今読んでおる………」 しばらくして、左吉は、曹達の方に向き直って、こう言った。 左吉「ここに書いてあるのは、どうやら、お前の先祖の『動達』が、自分の周りで起こった出来事を書き記した物らしい」 曹達「何について書いてあるの?」 左吉「殺人事件についてじゃ」 曹達「殺人事件………?」 左吉「どうやら、お前の先祖は、ある工房に勤めていたらしいのだが、その同じ工房で働いていた兄弟子の奥さんが殺されたらしい」 曹達「へぇーっ。それで………」 左吉「その兄弟子って人が、お前の先祖に当たる人に、『真犯人を探してくれないか。いや、犯人に繋がる手がかりだけでもいいから探してくれないか』と頼んだらしい」 曹達「それで………」 左吉「探してはみたものの何の手がかりも見つけられなかったらしい。ここには、そんな事が書いてあったよ」 曹達「ふぅーん」 左吉「ところで、こんなものどこに在ったんだ?」 曹達「この前の大掃除で、物置を久々に掃除した時に、物置の奥の方から、両親も在ることすら知らなかった長持が見つかったんだけど、その中にこの古文書と思われる書き付けを見つけたんだ。それで、じっちゃんなら、何が書いてあるのか分かるんじゃないかと思って、早速、持ってきてみたというわけさ」 左吉「そうじゃったか………」 このとき知った事実が、1年ほど後の今日、知ることとなる事実と関係があることなど、その時はまだしる由もなかった………。
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