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プロポーズ
こんな事が起こらない限り、凜が俺と真剣に向かい合うことは無かったと思う。この事態は俺にとってはフォロー。
凜の病室にはほとんど毎日、行くようにしている。
意地を張り疲れたのか、最近は前ほどつっけんどな態度じゃなくなってきてるし。
今日は少し遅くなったけど、顔だけ見て帰ろうと、いつものように病室の引き戸を開けた。
そんなに遅い時間ではないけど、珍しく眠ってる。
妊婦は眠いっていうし。
掛布団の上に出ている左手を取る。
昔、夏休み、まだ小さい頃、3人でお昼寝をした時を思い出す。
凜を真ん中に右側に仁、左側に俺。
仁と俺は片方ずつの手を両手で包むように、凜の右側と左側で眠ったもの。
「律?」
凜が目を覚ます。
「ゴメン、起こした?」
「最近、いくら寝ても、寝たりないみたいで。いつからいたの?」
「よく、小さい頃、俺、凜の左手握って昼寝したなって思いだしてた。仁はいつも右手側だった」
「そうだったかも。仁はいつも痛いくらいに握ってきたんだよね、律は優しく包むように」
「俺だって、強く握ることも出来るよ」
「今のままでいい」
凛は手をふりほどこうとはしない。
逆に少し握り返してきた。
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