8話 ④ー向ー

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「そもそもお父さんは、  反対してないからなあ。」 「………………え?」 さらりと言った言葉に、 3人の声がハモった。 「…え!?うそ!?そうなの!?」 そして、おばさんがかなり驚いて、 おじさんを凝視する。 「うん。  だって元々、あっくんは  息子になるんだろうなーって  思っていたし。  ……さすがに  兄の方だとは思ってなかったけど…  まあ、あっくんが家族になることに  変わりはないしね。」 あっけらかんと言って、おじさんは、 俺へ、真っすぐに、目を向けた。 「……結婚していても、  子どものいない夫婦は、たくさんいるし。  結婚しても、離婚したらそれまでだし。  男同士だとか関係なく、  大事なのは、   パートナーと、  “ずっと一緒にいたい”っていう   気持ちと、  …“ずっと一緒にいる”という   覚悟だと、思うよ。」 そう、ハッキリとした声を、 重ねていき。 「…まあ。  つまり、お父さんはオッケーです。」 おじさんが指でオッケーマークをつくった。 「そ、そうだったんだ……。  ずっと黙ってるから、  怒ってるのかと思った…。」 すると良太が、 緊張が抜けたような声を出す。 「いやあ。  お母さんが、なんか  思い詰めたような顔してるから、  どうしていいかわかんなくなっちゃって。」 「あら失礼ね。  別にそんなことないわよ~。  ねえ良太?」 「いやー…  とりあえず、なんか怖かった。」 そうやって、 3人は、すっかり表情が緩んで。 気付けば、 いつものような、 和やかな空気が、流れていた。  そのとき、 俺のリュックが、 ブー…ブー…と震えた。 「あら、電話?」 おばさんの声を聞きつつ、 鳴り止んだケータイを取り出すと、 母さんからの着信が、表示されていて。 画面に表示された時刻から、 家を出てから大分経っていたことに、 気付いた。 「…すみません、帰ります…。」 ケータイをしまいながら、 慌てて立ち上がると。 「あっくん。」 おばさんから呼ばれて。  「……凪さんとも、   ちゃんと、話してね。」 そう、穏やかな顔で、微笑まれ。  俺は、  おばさんの目を見て、頷いた。
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