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林家の嫁、寝込む
この気がきかない日本人の嫁も同居し、2年くらいたった
ある日、私は風邪で寝込んでしまった。
とにかく喉が痛いし、節々は熱で痛い。
部屋のそとで声がする。一番下の娘と、嫁だ。
「あー私のり巻き食べたいんだけど」
「私、買ってきますね」
「えーお母さんの作ったのがたべたーい」
「お義母さん具合悪いのでそれは……」
「私はお母さんに作ったのが食べたいの。もういいわよ」
とばたんとドアを強くしめる音がした。
末っ子の娘はあやまかしたせいか、少しわがままだ。
私がのり巻きをつくれないのを知って、拗ねて自分の部屋へはいったようだ。
はぁ仕方ない。
私は具合が悪いがのり巻きの材料を買いに市場に出掛けた。
寒い。外に出て無理したせいか熱がぶり返した。熱のせいか節々が痛い。喉も痛くうまく声がでない。
材料だけ買ってなんとか家に帰った。
のり巻き作りは結局夫にも止められ、私も熱で作ることができず布団に横になった。
「お義母さん、生姜となつめで作ったものです。蜂蜜も入ってのどにいいですよ」
部屋で寝込んでいた私の耳元で、嫁の声がして、目をあけた。
窓の外は真っ暗だった。寝た時はまだ明るかったが、結構長い時間寝ていたらしい。
嫁がなつめいりの生姜湯ですといって持ってきてくれた。
飲む為に起き上がろうとするがうまく力が入らず起き上がるのが大変だった。そんなわたしの背中にそっと手を入れ体を起こしてくれる。
「お義母さんがこの間教えてくださったとうり、なつめと生姜を煮詰めてつくってみたんですが、味大丈夫ですか?」
マグカップに入った生姜湯からは湯気がたち、生姜独特の香りが鼻をかすめた。飲むと、のどがすこしヒリヒリするが美味しい。
「部屋が乾燥するので濡れタオル部屋にいくつかかけときました。氷かえましょうか」
何かヒヤッとするものがあると思ったら、アイスパックにタオルを巻き付けたものが私の横にあった。
―熱があるから、冷やしてくれていたんだ。
生姜湯を飲んでいると、急に嫁がふくらはぎをもみだした。びっくりして嫁を見ると
「私、熱出たら身体中の筋肉や関節が痛くなるんですけど、どうですか。マッサージしたら少し楽じゃありません?」
確かにマッサージされると楽だった。熱で関節や筋肉までもが熱をもち、ギシギシし痛かったがマッサージで少しやわらいだ気がした。
しばらくマッサージしたあと,嫁は私が飲んだマグカップを持って部屋を出ていった。
夫がそんな嫁の様子を見て
「うちの嫁が最高だな」という。
夫は熱心にがんばるこの嫁を気に入ってるようだ。
そんな夫に対していつもはイライラするが、今日は不思議としなかった。
そしてこの林家の新しい嫁を少しは認めてもよい気がした。
-この子はまだ最高の嫁じゃない。でも、私はまだ若いし、10年くらい教えこんだら最高の嫁になるかもしれない。
林家のこの私が直接教えるんだから、と布団に横になりながらそう思った。
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