第壱帖 麗らかな日に

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第壱帖 麗らかな日に

 蒼穹に、柔らかな陽射しが降り注ぐ。桃の花のピンクが目に優しい。膨らみ始めた白木蓮(マグノリア)は、今にも笑い出しそうだ。  先日、最後のお役目を終えた私は大きく背伸びをした。もう、重すぎる十二単や、気に入らない髪型も必要ない。生まれる前から決められていた夫からも自由。そして侍従達からも。 「妻よ、思えば長いご縁だったな」  束帯装束に身を包んだ夫はそう言って微笑みかけた。 「ええ、これからはお互いに自由を楽しみましょう」  私は微笑み返す。 「私は新たな恋を楽しもうと思う」 「あら、素敵!」 「実は、三人官女の内の一人が気になっていてな」 「あらあら、ここは大勢の者達がいるから、早めに捕まえないと大変よ」 「うん、今から声をかけてくる」 「検討を祈るわ!」  颯爽と去って行く元夫。着替えずに行くのかしら。まぁ、鉄は熱い内に打て、て言うしね。実ると良いわね! 既に、侍従達は私たちに挨拶をした後、我先にと自分が興味ある場所へと散らばって行ったわ。  さぁて、私はまず、洋装に着替えたいわ。ビクトリア調のドレスが素敵ね。希望者の列はあそこね。  男女を問わず、かなりの者が列を作っているのね。この後は、長過ぎる髪を切ってパーマをかけたいわ。ヘッドスパとやらも受けましょう。あ、着替えの前にエステもいいわね。  その後は花札や麻雀なんかもやってみたいわ。ロッククライミングも興味あるわね。  あぁ、色々やりたい事があってワクワクしちゃう!
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