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呆然と日葵は立ちすくんでいた。
(私に触れたい……そう言った?)
あり得ない言葉に日葵の頭はパニック寸前だった。ようやくやっと昔に戻れたと思っていた。しかし本当にそうだろうか?
日葵はグルグルと自分に問いかけていた。
あえて昔のように「そうちゃん」と呼ぶことで平静を装っていたのは事実だ。
その呼び方の違和感を感ずっと隠していた。
今は昔の壮一ではなく、厳しくも頼れる上司の方が強い。
(それはどういうこと?)
考えてもわからない。ただ、ようやく壮一と話せるようになった事実が、すぐに消え去ったことが、日葵にとってとてつもなく悲しいことだと理解したのは、ただ流れ落ちていた自分の涙で気づいた。
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