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「一緒にいれば、自粛生活のストレスも半減だっただろうな、って何度も思いました」
『僕もです。半減どころか、ストレスなんて感じないかと』
「またそんなことを」
私はぷっと笑う。
『午前中は庭いじりをして、午後からオンラインで家庭教師、夕方から一緒に料理をして』
「またバルコニーで食事をしたいです」
『ええ、とっておきのワインで乾杯しましょう』
「いいですね」
『食後は、二人で毎晩映画を観ましょう。楽しい映画、泣ける映画、怖い映画』
「感想を言い合いながら、眠りにつくんですね」
『もちろん、そのまま寝かせられる気はしませんが。僕にとって一日で一番待ち焦がれていた時間になるのですから。
起きる時間など気にせず、夜更けまで二人の時間を楽しみたいです』
「……も、もう」
気恥ずかしさに俯くと、ホームズさんは愉しげに目を細める。
『夢のような生活ですね』
「オーナーや店長は?」
『今は頭の中で排除してました』
「ひどい」
『でも、祖父も落ち着いたら好江さんのところに、父は養父のところに行きたいと言っていましたから』
それは以前から聞いていたことだ。
『籍を入れたその夜は、二人だけで式の真似事をしましょうね』
本当にそうできたら。
もし、叶わなくても、私はホームズさんのこの言葉で、がんばれるだろう。
そう思いながら、
「……はい」
と、私は頷いた。
〜if〜
The END
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