海賊のラム瓶

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よう、ひイ、ホウ、よーう! ホウ! 陽気に海賊は歌うよ ラム瓶片手に (金曜夜の飲み会で、目の前のロックの氷はまわる、ちょうど天井にかけられたミラーボールと同じ速度で、ゆっくりとゆっくりと酔いもまわる、私もまわる) 血液全部が酒だったらどんなに楽か知れねえ べらぼうよ! よう、ひイ、ホウ、よーう! ホウ! (まわるまわる、氷も目の前も……救急車のサイレンがふと鳴り始める) おいらは七つの海を渡ってきたぜ べらぼうよ! 一杯やろうぜようそろう! よう、ひイ、ホウ、よーう! ホウ! よう、そこの姉ちゃん、飲み比べだ 姉ちゃんに銀貨一枚! 俺は二枚だ! (会社のスーツ姿の男たち、女たちは姿を変え、腕に入れ墨がある屈強な男たちと、舌にピアスをしたターバンを巻いた女たちになっていた) 「他ノ奴ラニャ、酒ト悪魔ニ飲マレタゾ」 空をぐるりと一回りしてオウムが歌う オウムが飲み比べ相手の男の方にとまる さあ、飲みねえ (ラムのお替りもう一杯いいですか) ……じりりと舌に触るアルコール、病みつきになるキレと冷たさ、のどを鳴らして飲む 姉ちゃん、あいつがつぶれるのはじきだ。甲板に上がって一服してな (大丈夫ですか、……さん。ちょっと表に出て休憩したほうがいいですよ) だめ、立てない (ごつんと頭をテーブルに突っ伏し、すうすうと私は寝息を立てた、終電はじきだ) 「姉チャン」 (居酒屋の看板オウムがこちらをみつめる) 「明日モ、ガンバンナ」
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