蘭子

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蘭子は、イライラと携帯の返事を待っていたが、相手の裕二からは 一向に返事は無かった。 諦めて、違う番号へ掛ける、待っていたかのように 二回コールしただけで、出た相手は「武です」と言った。 「直ぐ来れる?」「はい、直ぐに」それだけで、お互いに携帯を切った。 バイクを飛ばしてやって来た、小柄な男は 蘭子のマンションの入り口に有る装置で、10階のボタンを押した。 部屋の中で、カメラに映る武を確認した蘭子は 入り口を開けるスィッチを押す、開いた入り口を通り エレベーターで10階に行き、蘭子の部屋のチャイムを鳴らす 「開いてるわよ」と言う声を聞き、入って来たのは、冴えない顔の 見るからにオタクっぽい若者だった。 「これ」と、頬を染めながら、一輪の赤い薔薇を差し出す。 蘭子は「ありがと」たった一言、お礼を言うと 用意していた一輪挿しの中に投げ入れた。 「何が、故障したんですか?」部屋に上がりながら聞く。 電気製品が故障した時しか、蘭子は呼んでくれない。 「その話は、後よ」蘭子のその言葉で、勘の良い武は 今日の蘭子は、早く満足したいのだと、直ぐに洗面所に行き 丁寧に手を洗い、来る前にしっかり、歯磨きはしたけれど もう一度、置いて有る、ハーブ入りの水で、うがいをした。 これで、やっと蘭子を抱く事が出来る。 それでも、口へのキスは、許されていなかった。 ベットへ行き、横になっている蘭子の部屋着を、そっと脱がす。 白く輝く身体は、目が眩むほど美しい、ごくりとつばを飲み込む。 その容姿に似ず、武は、蘭子を燃え上がらせるのが上手だった。 蘭子の身体が喜ぶ所を、くまなく愛撫しながら、気持ちを高めて行く。 「はぁ~っ」切ない吐息が、蘭子の口から洩れ、ぐんぐん上り詰めて行く 武は、口の中で転がしていた胸の先を、つぃ~っと吸い 花の蕾を揺すっている指は、最速になった。 「ああっ」のけ反った蘭子は、がくがくと崩れ落ちた。 大急ぎで、蘭子の花の中に入って来た武だが、そのものは小さく あっという間に果ててしまった、それでも蘭子は、優しく武を抱き 「良かったわ、武」と言ってくれる、武が、最も嬉しい時だ。 初めての女の様に、武の物を見て、吹き出す事も無く 二度目の女の様に、憐みの目で見る事も無い。 こんなに凄い美人なのに、誰も相手にしてくれない俺にも、優しい。 まるで女神の様だと、いつも思う。 身体のほてりが、少し冷めると、蘭子はベットを降り、ソファーに座って 武に、用事を言い付けた「出来る?」「はい、任せて下さい」 「お金、いくら位かかる?」「十万も有れば、大丈夫です」 蘭子は、財布の中から、二十万円出して「出来るだけ性能が良くて 目立たない物にしてね、お金は、いくら掛かっても良いから」と言った 「分かりました」でも、どうして?と言う言葉は飲み込む。 蘭子の気に触る事は、絶対言わない、蘭子は、そんな所も気に入っている 一輪差しの薔薇に口づけをして「良い色ね」と言うと 「じゃね」と手を振った、言い付けられた仕事をする為に またすぐ蘭子に会える、武は嬉しさに、心も軽く帰って行った。
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