四. 旅立ちの星夜

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 卒業式からちょうど二ヶ月後。メイスの葬儀がとり行われた。  逮捕されたグレンジャーの証言通りに、メイスの遺体は林の中から見つかった。そしてようやく、メイスの死は知らされるべき人々に知らされた。その死因が、自殺ということも。  彼の訃報は多くの人々に悲しみをもたらしたけれど、幸い長期休み中だったのでプラウ・カレッジの生徒たちが混乱に陥ることはなかった。  メイスの墓の前で、リオはたたずむ。  あの旧科学室から解放されたメイスは、家族や友人たちからの別れの言葉を受け取れただろうか。メイスのために集まり、涙し、思い出を語る人々の愛を、感じられただろうか。  メイスはあの夜、一人で星空に向かって窓を飛び出した。それから二年間、幽霊となって一人きりで旧科学室をさまよったけれど——今はもう誰も、メイスをひとりにはさせないとつよく思っていることが、わかっただろうか。  ——きみが好きなものを持って行きなさい。  あの旧科学室の大掃除の日、グレンジャー先生にそう言われたことを思い出す。  リオは、ポケットからしわしわになったメモを取り出した。暗号の書かれたこのメモを、リオは今も肌身離さず持ち歩いている。  メイスが残した最後のメモ。メイスが自分自身を思ってくれるだれかを想像して、つくった暗号だ。  人は完璧ではない。ずっとこころのどこかで助けを求めている。その声に耳を傾けられる人間になりたいと、リオはつよく思うのだ。  このメモが手元にあるかぎり、いやでもその気持ちを忘れることはないだろう。  メイスの幽霊と過ごした二日間のことも。  メイスはずっと、リオのなかで生き続ける。  まばゆい金色の髪と、紺碧の瞳と、ばら色の唇をたたえて。いつかリオが見つけるであろう星座になって。  リオの永遠の憧れとして、生き続ける。
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