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マハー・カミラさんってよく分からない
三十分くらいでマハー・カミラさんは帰ってきた。
バニラからチョコ、ストロベリー、抹茶、大納言・・・全部で十種類。
アイスクリームの大きなカップが、目の前に静止して浮いている。
「ありがとうございます。でもこんなにたくさん、ちょっと食べ切れません」
「明日また食べればよい。この杖を使えば、ずっと冷たいまま、溶けることはない」
「お金はどうしたんですか?アイスクリームを売っている店の場所とか分かるんですか?」
なんとなく気になったので質問してみた。
「お前はわたしをだれだと思っている。紀元前二三〇〇年前、インダス文明の始まりと共に生まれたマハー・カーラを頂点とするインドの神の一族のひとりだぞ。マハー・カーラはその後、中国、日本と伝来し大黒天となった由緒正しい神だ。マハー・カーラに及ばずとも、森羅万象、このマハー・カミラにできないことはない。それでも少しばかり時間を必要とする場合もある。アイスクリームについては、時間を短くするため、お前の協力を仰いだ。ただそれだけのことだ」
マハー・カミラさんが落ち着いた表情で答えた。
「さて少年・悠馬。お前はどのアイスクリームにする? 一番好きなものを今日、食するがよい。明日はまた別のものを選べばよい」
そう僕に聞いてから、一瞬だけ僕に背を向けた。
僕の方に向き直ったら、厳かに僕のこと、にらみつけてきた。
「勘違いするな? 少年・悠馬。お前は明日死ぬのだ。マハー・カミラの領域を侵した者の運命なのだ」
僕はそのまま下を向いていた。やっぱり僕の運命、もう決まってるみたい。
「残ったアイスクリームはわたしがいただく。 お前の血肉のフルコースのデザートにな」
マハー・カミラさんの声が響いた。
覚悟してたんだけど、やっぱりひとしずく涙が落ちた。
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