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あれから一年後 ―――
「ねえ琴子さん、私のプリン知らない?」
「え?知りませんけど・・・ご自身でお召し上がりになったんじゃありませんか?」
「んなわけないじゃない!いくら私だって、自分が食べたかどうかぐらい覚えて・・・あ!まさか・・・」
「何だよ、璃子・・・」
オレはふふーんと鼻を鳴らしながらこちらを見つめる璃子を一瞥すると、再び返信中のLINEの画面に視線を戻した。
「そういえば、アンタ・・・昨夜お風呂上りに冷蔵庫覗いてたわよね?」
「だから何だよ、風呂上りに水を飲んじゃ悪いのかよ!」
「フンッ、そのついでに何か見つけちゃったんじゃないの?」
「・・・・」
たしかに・・・その場にあったプリンに手を掛けた事は否めないが、こっちにも大事なLINEのやり取りがある。
「ちょっとバカ蒼哉!聞いてんの?こっちが大事な話してるのに、何しれーっと携帯なんか弄ってんのよ!」
「うるせーな・・・プリンごときでゴチャゴチャ喚いてんなよ!こっちもいろいろと忙しいっつーの!」
「フンッ、何が「忙しい」よ!携帯片手にソファでふんぞり返ってるだけのくせに。って、やっぱり犯人はアンタだったのね!?」
まぁ、結果そういう事になるが・・・そっちがそう来るなら、オレも言わせてもらう。
オマエの方が、オレより百倍我儘を言ってるはずだ!
「だったら何だよ?オマエだって人の事言えないだろ?一緒に東京へ行った時、オレの柿ピーを貪り食ってたじゃねーか!あん時のオレ、一度でもオマエを咎めたか?それどころか広い心で静かに見守ってやってただろーが!」
「はあ?アレは私が買った柿ピーでしょ!アンタが柿ピー買ったのは出所した日だけ!それもちょっと食べただけで、あとは全力で奪われたわよ!」
「・・・・」
へ・・・そうだっけ?
てっきり柿ピーは全部オレが買ったものとばかり・・・
「仮に柿ピーを食べたからって、アンタが黙って私のプリンを食べていい理由にはならないでしょ?ホンット、意地汚いにもほどがあるわ!しかも、一年以上前の出来事を持ち出して・・・いったいどんな教育を受ければこんな卑怯でしょーもない人間に育つのか。まったく・・・親の顔が見たいもんだわ!」
「悪かったな・・・オレの教育が行き届かなくて。」
ナイス、朔!
オレの窮地に颯爽と登場する朔。やはりオマエは最高の兄貴だ!
「あ、あ、朔哉さん・・・べつにそういう意味で言ったわけじゃ・・・」
「じゃあ、どういう意味で?」
「あ、あ、あの・・・それは・・・」
ふふん・・・オマエこそ、朔の前じゃ何にも言い返せないくせに。
オレは、ほくそ笑みながらLINEの返信を終えると、琴子を職場まで送るために車のキーを掴んだ。
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