しばられている。

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しばられている。

 最近、バイト先で気になる人ができた。  彼女の名前は、江崎(えざき)莉奈(りな)さん。いつも優しい笑顔で人に接していて、それでも仕事はきちんとできる――というか、自分の分だけじゃなくて他の人のフォローまでさらりとこなしてしまう。  それだけでももちろん、憧れずにはいられない。そのくせ顔もいい、スタイルもいい、声も綺麗で、誰にでも優しい。なんてことだろう、非の打ちどころもなさ過ぎて、ちょっと分けてほしくなるくらいだ。  もちろん、わたしじゃ彼女には届きやしないだろう。  だけど、そんな理由で諦められるほどこの気持ちは潔いものではなかったから、わたしは彼女にお願いしていた。 「江碕さん、今日仕事上がった後一緒にご飯行きませんか?」  莉奈さんは「うん、わかった」と軽く微笑んでくれていたから、本当に楽しみにしてたんだ。  それなのに――――。  仕事が終わって、携帯を見たわたしは、すぐに彼女に謝らなくてはいけなくなってしまった。 『このあと、時間あるよね?』  時間なんてないって言ったってお構いなしなくせに。  彼からのメールには、逆らえなかったから。
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