第27章 行かなきゃいけない

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「ごめん…。でも、もう少しだけ待っていたいんだ」 
今の俺が答えられることはこれだけだった。彼女に対して誠実な対応だとは我ながら思えないけれど、それでもこれが俺の本心である以上はごまかすことはできない。
 梅田は大きな大きなため息をついた。
 「謝るんはやめてよ。私だってそりゃ会いたいし…。でも」
 でも…と言葉を区切り梅田はどう言えばいいのかわからなくなったのか口を小さくパクパクさせた後に、また小さくため息をついた。そして頬杖をつきながら窓の外に視線をやった。
 「ホンマ、厄介な人のこと好きになってもうたなぁ…」
 誰かに対して言ったわけでもなさそうな、空中に浮遊するように彼女の口から出たその独り言に、俺は何も言えなかった。
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