episode262 急変

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「僕が必要なくなった?」 そうとるのか——。 僕の顔色を見ながら九条さんはそっと肩に腕を回した。 「本当のことを言ってくれ。君にはやっぱり僕より征司くんなのか?」 まさか——。 恩着せがましくも僕を支配し 自分が思い描く通りの世界に僕を引きずり込む男だぞ。 「何とか言ってくれ——おかしくなりそうだ」 愛のためだけの温かな抱擁。 穢れも罪もないただ真摯な眼差し。 「ごめんなさい……でもね僕……あのね……」 言葉を失っていた僕がようやく口を開くと。 彼は全身全霊を傾けて聴いてくれるんだ。 「いいよ。何を言ってもいい。僕を傷つけることを怖がらなくていい」 「九条さん……」 「ただ拒むまないで。頼むから僕と向き合うことを拒まないでくれ」 いつだってそうさ。 彼はこうして凍てつくような僕の心の虚しさを 諦め交じりの罪深さを許し受け止めてくれたから——。
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