episode262 急変

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「分かった——君がそこまで言うならもう反対はしないよ」 後ろから駆けてきた。 諦めを孕んだ声が僕の腕を掴んだ。 「九条さん……?」 「だからこのまま、僕らが気まずくなるなんて間違ってる」 まさか彼が僕を許すなんて——。 その証拠を見せるように後ずさる僕を追って 彼は腰を抱き寄せながら階段の途中で口づける。 「君の気持ちは痛いほど分かってるさ」 気持ちのこもったキスの後。 伏せた睫毛が吐息交じり囁く。 「このままじゃどうせ眠れやしない。だろ?」 視線を上げると 体の芯まで熱くする眼差しで僕を射抜いて——。 「せめて僕の部屋で一杯飲んで——君を腕に抱いて眠らせてくれよ」 九条さんは強引な手つきで僕を引き寄せる。 「それぐらいの我儘聞いてくれてもいいだろう?」 この期に及んで僕が断れるはずなかった。 「分かった」 コクンと頷く。 僕の下唇を親指でそっとなぞって。 「君にとって悪いようにはしないさ——約束する」 九条さんはいつもと同じ誠実な眼差しで言った。 誠実すぎるほど澄んだ眼差しで――。
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