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「俺、葉月と結婚します」
片桐君は強い眼差しと口調で言った。
やっとそこでその言葉に驚いた婚約者の両親と片桐君のお母さんまで立ち上がり、部屋に居る人を全員確認出来る状況になったのだが、私はというと片桐君にというか異性に初めて名前を呼び捨てにされたのと、この距離感にドキドキしすぎてそれどころではない。
呼び捨ては一応聞いていたが、肩を抱き寄せられるなんて聞いてない!
「だから彼女とは結婚しない」
片桐君は動揺する私に気付くことなく強く宣言すると、片桐君は今度は私の左手を掴む。
驚いて顔を弾かれるように片桐君に向けると、「行くぞ」の声と共に手が引っ張られた。
片桐君は私の手を握りながら踵を返すと扉を開けて走り出した。
背中には片桐君を呼びとめる声が聞こえる。
片桐君は振り返りもしない。
私は引っ張られながら必死に走ってついていく。
こういうの、ドラマで見たことある。
身分違いの二人が恋に落ち、両親に反対され、最後はウェディングドレスを着た花嫁を掻っ攫って二人は駆け落ちする。
私は偽物でドレスは着てはいないが、まさか私がその中心に居るなんて!
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