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私は勤めていた研究所を出た。それからの日々はただ自分の考えた通りに実験を行う為に、場所を確保し資材を集め、今までの世話になった研究所から必要な物を分けて貰いようやく始める事が出来た。
「しかし、本当にやるのか?そこに正義も倫理も無いんだぞ」
「関係ないね。もし、この実験が成功すれば人類は次のステップに向かう事になる」
薄暗く静まり返った研究所で、最後に引き止めて来た同僚との会話を思い出していた。しかしもう、立ち止まる事など出来ない。何故なら私は思い付いてしまったのだから。
それからはただ研究の為に生き、研究のために人生を注ぎ込んだ。
再生医療の現場で働いていたのは、男にとってまさしく幸運であった。型遅れの機材を手に入れられ、ノウハウの基礎は全てそこで学べたからである。
そして、自分の体細胞組織から作り出した自分のクローン脳が出来るまでは、さほど時間は掛からなかった。
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