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深い紺色の学生ズボン、ボクサーパンツを脱いだ。産毛しか生えていない太ももが露わになり、ほんの少し肌寒い印象を受ける。武本のペニスは先端から透明な液体を漏らして、張り裂けそうな熱を帯びていた。 「私さ、机の角っこに擦り付けたりするのが好きなんだ。だから、申し訳ないんだけど、太もも貸して?」 やはり彼女もオナニーをするのだ。その事実がより武本を高揚させ、ペニスと共に武本は頷いた。 スカートの裾を少しだけ捲り、真っ白な膝小僧が見える。そのまま大田は彼の右太ももに跨った。 別の生命が宿ったようで、人間とは不思議な生き物だなと感じた。人は指先や足先までも自由に動かすことができる。それは触感というやつだ。彼女の秘部を、武本の太ももが感知した。小さな膨らみは温かかった。ただどこか湿っている、それは彼女も興奮しているということなのだろう。目に見えない事実がペニスに伝わる。 何か言うこともなく、武本はペニスを扱いた。彼女から香る柔軟剤の匂い、シャンプーの甘い香り、触れた太ももの体温、全てが夢のようだ。大田の両手が彼のうなじに回り、支えるようにして彼女は秘部を武本の太ももに擦り付けていった。まだ彼女は準備万端ではないようだった、どこか探るような表情を見せている。どんどん右手の動きが早くなり、大田はそれを見て言った。 「すごいね、ぴくぴくしてる…小説だけだと分からないけど、そんな必死な感じなんだ…。」 言葉にすることで彼女は高揚したようだ。漏れる吐息に媚を含み、小さな喘ぎ声が溢れる。物静かな雰囲気の表情はそこになかった。 緊張感によるものなのか、臀部から伝わる熱がペニスの中を行ったり来たりしている。彼女とのセックスはもちろん妄想していた。だからこそこの状況になればすぐに果ててしまうのではないかと思っていたが、頂きはまだのようだ。だからこそ武本は右手に力を込め、より加速させていく。 「んっ、気持ちいい…武本くんは…?」 息が荒くなっていた。それは大田も同じで、より動きや声が大胆になっていく。少し湿った膨らみはパンティーの布にシミを作っているのだろう。温く感じる範囲が広がるだけでなく、ひんやりと冷たい彼女の太もも、尻が膝小僧や太ももに伝わる。彼女の肌は程良い肉付きのためにとても柔らかい。 「気持ちいいよ、大田さん…あのさ、おっぱい見せてくれないかな?」 要望が通るのかどうか不安だった。しかし大田の反応は良好だった。腰の動きを止め、両手をうなじから離す。彼女は少しだけ眉尻を下げ、溶けそうな表情で頷いた。リボンを解いて机上に積まれた『義姉がくれたもの』の表紙に置く。薄い水色のワイシャツのボタンを一つずつ外し、今まで拝めないと思っていた彼女の肌が露わになった。 真っ白なブラジャーには苺のプリントが点々と施されており、その奥から微かな膨らみが垣間見えた。ボタンを途中まで外して、大田は言う。 「そんなに大きくないから、あまり見ないでね…。」 ブラジャーを下にずらすと、手のサイズに丁度収まる小ぶりな胸が揺れて飛び出した。濃いピンク色の乳頭には芯がある。舐めたいと素直に思ったが、そのわがままは嫌われてしまうかもしれない、そう感じて武本は視線だけで乳頭を愛撫をすることにした。 乳房には薄く青い血管が見える。このまま視線だけで穴が空いてしまうのではないかと思うほど、武本は目が離せなかった。 夏休み前には葛城とくだらない話をしたり、日常を過ごす室内で2人は秘密の行為をしている。ペニスを扱き、彼女は乳房を出して太ももに膣を擦り付けている。セックスよりも高貴な行為に思えて、ようやくペニスの先端に熱がこもった。 スカートで見えない彼女の秘部は、官能小説に似た少ない情報量を思わせる。視界に入らない彼女の膣は、今頃濡れているのだろう。感覚から小陰唇がぷっくりとしているのだろうと分かる。少し痞えるような感触は彼女の陰毛なのだろうか、複数のソフトティッシュに温い粘液を垂らし、それで擦られているような思いだ。 「やばい、大田さん、いきそうだ。」 びくんと脈打つペニスは爆ぜてしまいそうだ。そこでようやく思ったことは、どこに射精すればいいのかということだ。徐々に焦り始める武本だが、大田は高揚しながらも冷静だった。武本のうなじから右手を離し、ペニスの前に添える。彼女は言った。 「いいよ、ここに出して?」 うなじに左手のみの力が加わる。大田の腰の動きも早まっていた。その事実だけが、彼にとって限界を迎える大きな要因となった。 「いくっ。」 自分が太陽にでもなったようだった。徐々に下腹部の中に熱が生まれ、それがやがて大きくなる。溢れそうな熱が精子となって、ペニスという細い管を無理矢理通り抜けるのだ。白濁とした太陽光が少しふっくらとした小さな彼女の地球に届く。武本は1年間想いを抱いていた大田みのりの右手に射精した。 射精は苦しい作業だった。体内のすべてを細い管から吐き出すため、下腹部が壊れてしまいそうな感覚に近い。息が荒くなり、首を固定したまま肩で呼吸が始まった。右手に宿った彼の分身を、大田はじっくりと見ている。気のせいか、腰の動きがより早くなった。 「すごいね、たくさん出たね…すごい興奮する…。」 たっぷりと吐き出した精子はいつもより量が多い。あろうことか大田はそれを口元に運んだのだ。少しだけ尖った唇が開き、白濁液が流れていく。粘度のせいか、口端から精子が筋のように漏れていった。喉を鳴らし、彼女は武本の精子を飲んだのだ。 「苦いというより塩辛い感じなんだね。もう少しで私もいきそうなんだけど、見てくれない?」 もちろんのことだった、乳房を出して精子を飲んでもらったのだ。今なら武本が持っているすべてを彼女に差し出せる、そんな思いを持ちながら武本は深く頷いた。 右手が再びうなじの方へ戻り、腰の動きが早くなる。少しだけ屈むような姿勢で、彼女は武本の太ももに膣を擦り付けていく、喘ぎ声は先程よりも大きくなり、口端から垂れた精子が乳白色の首筋に線を描いた。もうわがままはいらない、嫌われてもいいとまで思った。だからこそ武本は自然と口を開け、彼女の乳頭に舌を当てた。硬い先端を転がすように舌を動かしていく。大田は受け入れてくれたようだった。 「あっ、それやばいかも…いっちゃう…んっ…。」 彼女の下腹部にも太陽が生まれているのかもしれない。太ももに擦り付けることで熱が高くなり、甘い声が太陽光となって武本の頭上にかかる。唾とハーブティーのような匂いがした。舌先をより早くスライドさせていき、大田の両手が武本のワイシャツの襟を強く掴む。くちゅっと粘液が肌と肌を擦り合わせることで聞こえて、聴覚でも彼女が感じているのだと知った時、大田は今までにない声量で言った。 「ダメっ、いく!」 いつも聞く彼女の声よりも大きい、さらに体もびくんと跳ねさせて、彼女の両足が武本の右足を強く挟む。微かな振動が伝わった。溢れるように余韻を口から漏らし、大田はぐったりと体を武本に預けた。深く息をして、彼女は耳元で言う。 「すごい気持ちよかった…こんな大きな声出したのはじめて。」 どろりと溶けたチョコレートのようにへばりつく声が武本の脳内に浸透した。まだ彼女の体はぴくぴくと震えている。 「俺も気持ちよかったし、びっくりしたよ。大田さんがこんなに感じるなんて。」 「ちょっと、言わないでよ…恥ずかしいよ…。」 先ほどまで武本の精子を溜めていた右手で顔を隠し、その向こうで大田はふふっと笑った。見えない彼女の笑顔がたまらなく愛おしく、大胆にも武本は彼女を抱きしめた。何度も自分を受け入れてくれる彼女が好きなのだと、強く感じる。大田も彼を抱きしめ、顔を見合わせて言った。 「またさ、こういうことしない?」 「もちろん。今度はそっちも見せてね。」 そう言って2人は別世界から2年3組へと戻った。官能的な世界から日常へ。広辞苑ほどの厚さがある官能小説を一度に何百冊も読んだような充実感を覚え、大田が立ち上がった時に久しく見ていない自分の太ももに、湿った何かで擦ったような跡を見ていた。 誰も見ていないのだろうが、2人は忍び足で校舎から離れた。校門を抜けて、2人は逃げるように走り出した。煌々とした太陽は西日となって雲の隙間に沈みかけている。青春ドラマのような感じがして、2人は走りながら笑い合った。 「ねぇ、大田さん。今度2人で官能小説を書いて見せ合いっこしない?自分が作り出した活字のエロスを共有するって、すごく魅力的だと思うんだ。」 短い横断歩道の前で、赤い信号が変色するのを待ちながら、武本は言った。並んでみると彼女は武本の二の腕ほどの身長しかなく、より小柄な背丈が愛おしく感じてしまう。首だけ動かして武本を見上げた大田は、上唇で口元を覆ってから言った。 「いいけど、条件つきね。私たち、付き合うことにしない?そうしたらたくさんお話書いて、たくさんああいうことをしようよ。2人で一緒に大人になろう?」 信号が青になった。武本の返事を待たず、彼女は横断歩道を駆け出していった。ぴょんと跳ねて振り返り、流れ行く通行人の間で言う。 「それと、オススメの本も紹介しようね。」 雲間から見える夕焼けを背に、彼女は歯をむき出しにして大きく笑った。 これは誰かの作品なのか。自分が主人公で、彼女がヒロインでいいのだろうか。もしかしたら釣り合わなくて脇役になってしまうことだってあるかもしれない。 ただ、今は彼女の笑顔を信じることにした。 帰宅して原稿用紙に書き記そう。彼女の魅力を鮮明に表現しよう、タイトルは、『太陽』にしよう。 何故か自分の姿が俯瞰的に見えて、武本は跳ねるように駆け出していった。
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