魔王だって眠くなる

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 まぁ、どんな経緯にせよ、死んだと思っていた親が生きていて目の届くところで馬鹿みたいに大笑いしてんならそれでいいか。  パムの実を数個魔王様のために、ロティとその他ここで働く子供たちのために・・・ひとり一個。  あっぶね。アホみたいに取ってまだ小さいロティに持たせるところだったわ。  七つでも大概なのに、ロティの言うまま欲しいまま渡してたら途中で力尽きるわ。  という事で、俺は五つ取ったうちの一つを齧りながら魔王の寝室へと向かう。 「パムの実を食べたらダメーーーー!!!」  三口目を飲み込んでもう一口と口を大きく開けたところで、見たことない魔族が慌てて走ってくる。 「パムの実は毒だよお!」  そう言いながら俺の手からパムの実を取り上げすかさず己の口の中に入れてしまう。  毒って言わなかったか、コイツ。  これでもかと頬を膨らませてパムの実を食べてしまった魔族は「人が食べちゃダメなんだよ」と言う。どうやら人には毒になるらしい。・・・てか! 「ロティたちにあげちゃった!」 「ロティ?」  小首を傾げてオウム返す魔族が、ああ!と思い出したように「連れてきた子たちかぁ」と何度も頷く。  取り返さなきゃと慌てる俺を、大丈夫だよぉと間の抜けた声で制する魔族に「ロティは、他の子も!大事な兄妹みたいなものなんだ!」と言えば「あの子たちは大丈夫だよ。もう主が精を与えているから」となんでもない事のように言う。  なんで!あんな小さい子にそんなことするんだ!と言ったところで、ここは人の国では無いのだから仕方の無いことなんだろうけど。それでも。 「あの時来た子の中で魔族になってないのはシルベールだけだよ」  呆然と立ちすくむ俺の手からパムの実を取り上げ、魔族の人が「魔王に用があるし、僕が届けるよぉ」とスタスタと歩き出す。  どのくらいそうしていたのか、ハタと気がついてガルの部屋へと急ぐ。あんまりだ。まだ子どもなのに。  勢いよく開けた扉の向こうで、この世のものとは思えない程の美貌を持った魔王がパムの実を片手に涎まみれで寝ていた。
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