魔王だって驚く事がある

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 パムの実が人にとって毒だと言ったのは誰だったか。特段魔王の部下について紹介なんてされてないし、こっちだって名乗ったことは無い。それでも俺が魔王ガルデリカの従者なのは周知の事実だし、その他あの日連れてこられた子たちがその魔王の部下・・・というか腹心の魔族の従者になったのもある程度は知られた事だった。  ディブィの従者がロティだったのは俺的にはちょっと意外だったけど、まあ村の子たちが幸せならそれでいい。  パムの実は魔力を纏う物にはご馳走で足りなくなった魔力を補ったりするものらしいが、あまり魔力の無い人が食べるには毒というより精力が付きすぎるとかなんとか。要は体の中で魔力が暴れ回るしそれに耐えきれないのだそうだ。  あの時三口でやめてよかった。あれ以上食べてたらガルの噛みきった腕を口に突っ込まれるところだった。  ・・・腹の中で合わせても問題ないのかはわからないけどな。  とにかくもう二度とパムの実は食べないと固く誓った。食ったのかと慌てたガルが腕を噛み切ろうとしたのをディブィが止めてくれて助かった。まだ魔族にはなりたくない。  死んだら復活させると意気込んでいたので、このまま人として一度死んでみようかと思っている。  その後復活させられるなら、その後はその時になって考えればいいと思う。  だって人なんだから。短い人生を人らしく生きていこうと思う。  そう心に決めて拳を握り締めれば、それを見ていたガルが怯える。魔王なのに。  王都で勇者様がご降臨なさったと噂になっている、というような話を持ってきたのは魔力を操るのに長けた魔族で、魔王の腹心のレイヴァーナ、俗にレヴィと呼ばれるチャラいヤツ。あ、こいつだ。毒とか言ったやつ。  このレヴィとかいうヤツが魔力を抑えるにいいだけ抑え、王都に忍び込み仕入れた情報だと俺に教えてくれたのは、俺専用の情報屋、魔王ガルデリカだ。  王都から俺の村まで早馬でも一年はかかるし、その村からここまで来るのにもかなりの距離を歩かなくてはならないから、勇者がここ魔王の城まで来るのには多分最低でも二年はかかるだろう。・・・これも情報屋から仕入れた。  便利だな、情報屋。
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