第1話 推しが友達ってアリですか?ー晴side

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「えっと、入学式の会場はこの講堂か」 大学の入学式当日になると、スーツを着て緊張した面持ちでキャンパス内の講堂へ入る俺。 今日が入学式で、明日がオリエンテーションか。 経済学部はこっちか。ちゃんと部ごとに席が分かれてるんだな。 俺が席を探してウロウロしていると、いきなり誰かに肩を叩かれた。 「はい?」 「お隣さんも俺と同じ大学だったのか」 「えっ!!」 声をかけて来たのはたくみんだった。 同じ大学って言った? 今。 「経済学部なのか?」 「そ、そうですけど……」 「へぇ。なんか面白いな。隣の部屋で学部も一緒」 ま、待って? 学部まで一緒!? 「芸能界を引退して大学に?」 「まぁな。起業したくってさ。まずは経済学学んどこうと思って」 「そ、そうなんですね……」 やっぱり芸能界に戻る気ゼロ! というか、俺みたいなガチヲタがたくみんのプライベート聞いて良いわけ!? アイドル辞めたとはいえ、贅沢に感じてしまう! 「何で敬語だよ。同い年だし、タメで良いって。隣になったよしみだ、仲良くしようぜ」 「な、仲良くなんてとんでもない! お、俺なんかと仲良くすべきじゃ……」 「硬い事言うなって。名前、何だっけ」 「あ、天沢晴……」 「天沢晴……ね。ハルでいっか」 「な、名前呼びなんてとんでもないから!」 「いちいち面倒くせぇ奴だな」 ずっと憧れてきたスターから名前呼びされるなんて罰当たりにも程が。 「だ、だって俺は……」 「そろそろ始まる。とっとと席行こ。話は後でな? ハル」 えーっ!? 関わらないどころかいきなり推しが俺のパーソナルスペースに豪快に飛び込んで来て困惑する。 仲良くなんてしたらだめだ。 下手したら俺、芸能界に戻ってとか激重な推し愛を伝えてたくみんに迷惑をかけ兼ねない! 「はぁ、入学式ってなんか疲れるな。この後教室移動あるみたいだし、一緒に行くか」 入学式が終わるなり、たくみんはまた俺に声をかけてきた。 「か、神城くん! お、俺は一人が……」 「俺が一人になったら女子が群がってうぜぇんだよ。男子といる方が気が楽だ」 元・アイドルならではの苦悩か。 けど、俺も女子並みに面倒くさいヲタクだよ!? 良いわけ? 気付いてないからな、たくみんは。
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