第一章 運命の輪が回り始めた

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第一章 運命の輪が回り始めた

 がちゃん、と派手な音を立ててトレイが床に落ちた。  乗せていたカップやグラスも、粉々になった。 「あぁ……」  そんな阻喪をしでかした、バイトの水原 樹里(みずはら じゅり)は悲し気な声を上げた。  また、やっちゃった。  バイトを始めてもう長いのに、必ずと言っていいほどしでかすミスは恒例行事だ。 「水原くん、早く後始末!」 「は、はい」  慌てて腰を落とし、大きめの破片をトレイに乗せていると、バイトの後輩が掃除機を持ってきた。 「邪魔だから、どいてください。これで全部、吸い取っちゃいますから」 「ありがとう。ごめんね」  業務用の大型掃除機が、破片も水も全て飲み込んでゆく。  破片の乗ったトレイをカウンターへ持って行くと、マスターがしょっぱい顔をして待っていた。 「壊れた食器の代金は、バイト代から引いておくよ?」 「すみません」  樹里は、しょんぼりと後始末を始めた。
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