1 苦手な生徒

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 数年前、憧れの教師になれたとき、僕は誓った。生徒と同じ目線で、彼らに関わりたいと。   自分にはそれが合っていると思ったし、なにより生徒たちも、そんなに僕に心を開いてくれた。新任だからクラスは持っていなかったけど、僕は生徒に人気のある教師だった。   押しが弱くてぬけてる性格も、生徒たちがカバーしてくれた。大人が頼りないと、反面教師で子供はしっかりするものだ。    なにもかもバランスよく、うまくいっていると思い込んでいた。小柄で童顔で、生徒の中に混じれば違和感がない。生徒たちと同じ目線のつもりだった。  いつの間にか僕と生徒たちの間では、最低限必要な線引きが曖昧になっていたのだ。  しっかり者で学級委員の女子と、大人っぽくて男子に人気の女子。彼女たち二人が、僕を間に挟んで喧嘩になった。  それは周囲も巻き込む騒ぎとなり、「子供同士の喧嘩」の範疇を超えてしまった。しかも、怪我人まで出てしまったのだ。  二人とも僕を純粋に慕ってくれていたのに、傷つけてしまった。僕は大人のくせに、彼女たちに頼りすぎていたのだ。    僕自身も、辞職に追い込まれてしまった。念願叶って実現した教師の道を踏み外したショックが大きくて、自分がなさけなくて落ち込んだ。  もう教師を諦めようかと思った。  けれど結局、再びこうして教壇に立っている。  やっぱり僕は、教師という職業が好きで、諦められなかったのだ。
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