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それから数年が経ち、俺は再び日本に戻った。国内の大学に通うためだった。
そんな俺の希望に対し、親から出された条件は一つ。卒業したら必ずアメリカに戻ってくること。
渡米する際、父親が友人と起こした事業は成功し、もはや拠点は完全にアメリカとなっていた。加えて、俺も高校生の時に始めたモデルの仕事が順調で、クォーターであることが影響してか、容姿を評価されることも多く、既に未来の契約の話もいくつか来ているくらいだった。
だからこその条件だったのだろうが、そもそもそんなことは言われるまでもなかった。だって元よりそのつもりだったから。
ただちょっと時間が欲しかっただけなのだ。
ばたばたと渡米することが決まった時、できれば日本に残りたいと言った俺に、両親はイエスとは言わなかった。その時の心残りを払拭するためにも、せめて最後の学生生活くらいは母国で好きに過ごしたかった。
本当にそれだけのことだった。この先ずっと、アメリカでやっていくことになるなら尚更に――少しでもそれっぽい思い出でも作っておきたかったのかもしれない。
まぁ、ある意味懐古的な性格なのは、昔からだったような気がしないでもない。
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