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「は…?」
「お主が、自分は伴侶を持たないと決意しているのに
顔も知らぬ相手を娶るよう言われたらどう感じる?」
「…そりゃ、勝手に決めるな!って、腹が立つかと思います」
「ましてお主の気持ちは鑑みられていないのに、
相手の女人に失礼だろうと諭されたらどう感じるだろう?」
「だったら俺の気持ちはどうなるんだ、俺に対しては失礼じゃないのか!?…と言いたくなるかもしれませんーーーって」
樹はふとあることに気付き、思い切り目を釣り上げた。
「なんか景虎殿が悪いような話になっていますけど、
そもそも菊姫と景勝殿の縁談を立てたのって信玄様と謙信殿じゃないんですか?!」
「…」
樹が問い詰めると、謙信はふいっと視線を逸らした。
「ちょっと!?聞いてます?
あなたが持ちかけた縁談ですよね、って質問してるんですけど?!」
「…ええとね…。
だから『良かれと思った』って、言ったろう…?
私自身が伴侶を持たず、縁者を頼って養子を招いたものの
何かと屋敷の者達の心象を良くするためにあれこれ奔走し、今も疲弊しているのだ。
だから景勝には私と違って、自身の血が流れている後継を産む為にも
妻となる女性が必要だと思ってね。
…私と同じような苦労をさせたくなかったんだよ…」
謙信がタジタジになりながら言うと、樹は呆れたようにため息をついた。
「ハァ…。結局屋敷内が分裂したのも、この縁談でのいざこざも、あなたが引き起こしたことじゃないですか」
「いやあ、部外者のお主にそれを言われてしまうと、私も立つ瀬が無くなるんだがね」
「そもそもなんで謙信殿は景勝殿をもう一人の候補者として招いたんですか?
そしてどうして妻として選ばれたのが菊姫だったんですか?!」
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