第34話……発情期※

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発情期(16) 「まず謝らないといけない事があります。」 中野クリニックの医院長は、珍しく真面目な顔で話を始めた。 今回の発情期が、どの程度発情が酷くなるか、予測不可能となっていたのは知っていたが、他にも話さなければいけない話があったらしい。 身体は、朝にはほぼ元通りになっていた。 薬が効いているようで、違和感はあるが。 今回の発情は、かなり重くなる可能性が高く、出来れば抑制剤を細かく処方して、発情コントロールをしたいと医院長の番の中野修也先生から、悠斗(はると)くんに連絡がきていたらしい。 確かに俺は発情周期を調べて貰う時に、抑制剤で抑え込む方法があるか、修也先生に質問したな。 結局俺の連絡先は、悠斗(はると)くんのスマホにしていた為に、俺まで直接連絡は来なかった。 悠斗(はると)くんは、今回の発情期が未曾有の発情になること知り、抑制剤なしでの発情期を提案した。 全て悠斗(はると)くんが相手をすれば問題ないと思ったそうだ。 蓋を開ければ、俺の発情に合わせて相手をしたものの、俺が自分の発情にオーバーヒートして、呼吸困難になってしまい、救急車を要請する事態になってしまった。 病院からは発情コントロールの提案がきていたのに、自分の欲望を優先した事にかなりの自己嫌悪に陥ってしまったようだった。 それでこんなあからさまにしょげてたのか。 バカだなー。 「結局俺の発情に自分でオーバーヒートしただけなんですよね?」 「?ああ、まあ、そうですね。」 「他にどこか身体的に悪いところとか……。」 「……は、ないですね。」 「……じゃあ、とりあえず、帰れるんですか?」 「……ま、そうですね。」 「今抑制剤で収まってるけど、まだ発情期は残ってるんですか?」 「……は?あ、まあ、今抑制剤が効いてますが、まだ時期的には発情期真っ只中ですからね。追加の抑制剤を投与もしくは服用しないなら、発情しますね。」 「あ、じゃあ、もう帰ります。」 「はい?」 「あ、すみません、悠斗(はると)くんが勝手なことして。……あ、あと一つ。これ、また俺が自分でオーバーヒートした場合の対処法とかありますか?」 「……えーと、オーバーヒートしそうになる前に、軽めの抑制剤を服用すれば、なだらかな発情になると思いますから、処方箋出しますけど。」 「あ、じゃあそれでお願いします。出来たらその軽めの抑制剤と、万一発情期を元から止められるように、強い抑制剤も貰えたら助かります。」 「えーと、うん、分かりました。」 「じゃあ、悠斗(はると)くん、帰ろ。」 「え、いいの?優一さん。僕酷いことしたのに。」 「うん、いいの、いいの。俺も抑制剤なしでの発情期、OKしたんだからさ、同罪だし。悠斗(はると)くんの絶倫具合知ってたから、さ。逆にごめんね、自分の発情をコントロール出来なくて、さ。」 ここら辺で中野医院長が、少し遠い目をして……ははは……と独りごちた。 中野医院長にはいつも困らせられているから、これくらい大丈夫だろう。 「じゃあ、帰って続き、しよ。」 そう言ったら、悠斗(はると)くんが赤面した。 「優一さん、どんだけ男前なんですか…。」 これからマンションに帰るのを考えると、もう少し悠斗(はると)くんには反省してもらわなくちゃとは思う。 だって救急車で搬送されたんだから。 どの面下げてマンション帰ればいいのやら。 俺。 しばらく引きこもるかも?
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