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建殿の入院
ここは、慈愛大学附属病院。
私、藤原光成の想い人である源建先輩を、見舞うため参上したのである。
建先輩は利き腕を骨折するという大怪我を負われてしまった。
建先輩はそそっかしくドジな一面がある。
しかし彼は決してただのボンヤリではないと私は見抜いている。
うっかりや簡単なミスは日常的であるが、その一面だけでボンヤリだと決めつけてしまうのは如何なものか。
彼は人の心の機敏には人一倍敏感で、鋭い洞察力を持ち合わせている。
私だけしか知らない建先輩の秘密の一面だ。
先輩の病室の前に立つと、中から声が聞こえてきた。
「源さん、今日も平熱でよかったですね。もうすぐリハビリの時間ですから」
看護師さんがいるようだから少し待つことにした。
「リハビリって今日もあの実習生の?」
「そうですよ。理学療法士の卵の村田先生が担当です。私も看護学部の実習生ですから」
慈愛大学の学生が実習に来ているらしい。
実習生に大事な建先輩の看護やリハビリを任せていて大丈夫なのだろうか?
「では、失礼します」
部屋から出てきた看護実習生に会釈をし、ノックしてから病室へ入る。
「建殿、ご機嫌はいかがですか?」
「おお光成、今日もきてくれたのか。毎日通うのも大変だろう」
ほら、自分のことより私のことを気遣ってくれる。
こういうお人なのだ。
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