1.提案 その一・・・由梨の質問

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1.提案 その一・・・由梨の質問

「キャー!」 カナちゃんが小さな悲鳴をあげた。 「はいってるよ!」 私たちの視線の先にある小さな紙片。 紙片がそこにある事実が余りにも以外で、それが現実になるとは予想外だったのだ。 だから、二人とも微動だにせず、体が固まっていた。 どちらも手を伸ばすのを躊躇って互いの顔を見合った。 「由梨ちゃん、取って」 「う、うん」 私はあたかも壊れ物に触るように恐る恐る手を伸ばした。 紙を摘んで胸まで引き寄せる。 そっと掴んだまま、二人はほぼ同時に立ち上がった。 どちらともなく、教室の隅っこに移動した。 教室には私たち以外に誰もいない。 それなのに、ヒソヒソ声で私が言う。 「ねえ、出よう」 教室から出ようという意味だ。 カナちゃんは無言で頷いた。 私たちはピッタリと互いにくっついて歩いた。 廊下の一番奥まで来た。  
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