8.新しい日常

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微笑んだ彼が、私の頬を優しく撫でる。 そのぬくもりに応えるように、私は彼の手に自分の手のひらを重ねた。 「なおくん。」 「ん?」 「その・・・『行ってきます』のキス、とか。」 そう言って、私は自分の唇に人差し指を当ててみる。 「・・・普通、『行ってらっしゃい』のキスだろ。だから、里佳からして。」 「えーっ!『行ってきます』ですよ。」 「いや、違う。『行ってらっしゃい』だ。はい、ここ。」 言い終わると、彼は自分の頬をツン、と指さす。 (もう・・・。絶対に、『行ってきます』だと思うんだけどな・・・。) そう思いつつも、「じゃあ・・・」と言って大きく背伸びした私は、屈んでくれた彼の頬に、ちゅっと軽くキスをする。 「・・・やっぱりかわいいな、里佳は。」 そう言って満足そうに微笑むと、市谷さんは私を抱きしめてキスをする。 それは、果てしなく甘くて深い、とろけるような魔法のキス。
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