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「驚かれると思いますが……、理人さんは今、記憶喪失になっています」
「はっ? 俺が記憶喪失?」
「はい。高熱で倒れられた時に頭を打って、記憶の一部が飛んでしまったようです」
「記憶の一部が飛んだ?」
綾瀬さんは信じられないという顔をして私を見つめた。
「はい。そうなんです。病院の先生が脳に負担を与えてはいけないと言われたので、今日まで記憶喪失になっていることはずっと隠してきました。黙っていてすみませんでした………。それで飛んでしまった記憶の一部なのですが……、理人さんと私は、実は結婚をしています。結婚と言っても契約結婚です」
「結婚? 俺が? 契約結婚?」
綾瀬さんが眉間に皺を寄せて私を見つめる。
「はい。これが契約の内容です。昨年、理人さんから契約結婚の提案を受けて2人で結婚をしました」
「俺が、契約結婚を提案した?」
今度は私が差し出した契約書を見て、顔色を変えた。
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