花言葉に想う

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ぼんやりと花を眺めながら、辻村は体育館裏に座っていた。 そこへ、教師の望月がだるそうに歩いてくる。 「やっほ、先生」 「やっほ、じゃねぇよ。なんでお前がここにいんだよ」 嫌そうな顔をする望月に、辻村はにっこり笑う。 「ここ、花が綺麗なんです」 「それなら向こうにちゃんとした花壇あんだろ」 そう言いながら、望月は辻村の横に並ぶ。 「私がここにいたらまずいんですか?」 「校内で滅多にない煙草を吸える癒しスポットだからな」 「先生はいつもこうやって体育館裏でこっそり煙草を吸ってるんですね」 辻村の言葉に、望月は手に持った煙草を見せてにやりと笑う。 「残念ながら堂々と吸ってるよ。おら、早く帰れ」 「嫌です」 「煙草の煙は身体に悪いぞー」 「吸ってる人が言わないでください」 望月は「めんどくせぇ生徒だな」と言いながら肩を竦める。 「あ、そういうこと言うんだ」 「お前相手に猫被る意味ねぇだろ」 「猫被るのは校長先生相手だけだ、と」 「そうそう……ってうるせぇよ。大人には色々あんの」 だるそうな望月の横顔を見上げて、辻村は「ね、先生」と呼ぶ。 「ん?」 「あれって何の花かわかります?」 そう言って、小さな可愛らしい紫色の花を指す。 「花ぁ? そうだな……チューリッ」 「違います」 「最後まで聞けよ」 「あれ、リナリアって言うんですよ。姫金魚草とも言います」 「へぇ……詳しいんだな」 「園芸部ですよ、私」 「そういやそうだったな」 「花は好きなんです。素直で」 辻村は花を見つめながら小さく微笑む。 「リナリアの花言葉って何だかわかりますか?」 「さぁ。何?」 「教えません。私は花じゃないので」 「は? あぁ、素直じゃないってか」 望月の言葉に辻村はくすっと笑って頷く。
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