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「頂きます……おぉ! もやし炒めうまっ!」 パチンと大きな音を立てて手を合わせ、ひと口食べてすぐにこのリアクション。慧は何を作っても、いつだって美味いと言ってくれる。 にやけそうになる顔を堪えながら、至って冷静に言葉を返した。 「野菜炒めな。」 「はいはい。」 「何事もイマジネーションが大切だからな!」 「わかったって。あー美味いなー。豚肉も人参も鶏肉もピーマンも牛肉も美味いわー。」 「それはもう野菜炒めじゃないだろ。」 「そこはほら、〝いまじねーしょん〟なんだろ?」 そう言ってニカっと笑う慧の顔を見たら、ドクンと心臓が音を立てた。 俺はとにかくこの笑顔に弱いのだ。 こんな風に笑われたら何だってしてやりたくなる。 好きだから…… それを自覚した時にはもう引き返せない程どっぷり沼の底に沈んだ後で、好きで好きで仕方なくて、慧さえ居れば他には何も要らないってくらいになっていた。 元々恋愛対象は同性だった。その事はずっと隠して生きてきた。好きな容姿も性格も割とはっきりしていて、慧は理想とは全然違ったから大丈夫だと安心しきっていた。 それなのに…… 一緒に住み始めたら今まで出し惜しみしていたみたいに、次から次へと魅力をぽいぽいぽいぽい出してくるものだから、俺はもうどうしていいのかわからないまま好きにならざるを得ない状況にまで追い込まれてしまったのだ。 つり目で強面な癖に、笑うと幼くなる所とか、 大した事してないのに、ありがとう。を必ず言ってくれる所とか、 見かけによらず心配性で、いつも俺の体調を気にかけてくれる優しい所とか。 もう、何なんだよ……って思うけど、慧が俺を友達としてしか見ていない事はわかっている。 お金がないから、俺はこうして側に居られるんだ。
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