勇者の話

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 勇者は困っていた。  魔王を倒してほしいと王様から依頼されたものの、最初にもらった初期費用のみで魔王を倒すように言われ、そのお金を元手にして装備を買ったり、途中から一緒になった3人の仲間の旅費も負担して何とかやりくりしていたというのに、お金がなくなった途端、3人の仲間は「金がないなら一緒にいる意味がない」と言って勇者の元を去ってしまった。  勇者には旅に出るときに王様から1億円入った通帳を渡されていた。現金が必要になったらこの通帳から引き出して使うようにと。それでレベルが5になったときに銀行に行ってちょっと現金を引き出して通帳を見てみると、二百万円が勝手に引かれていた。どういうことかと王様に問い合わせてみると「レベルが上がるということは、それだけ強くなりつつあるということだから、金がなくても問題ないだろ」と言われてしまった。  1レベル上がるごとに40万の自動引き落とし。レベルは最大100まで上がるのでそれだけで4000万が消える。  まずいと思い、お金を稼ごうと道中襲ってくるモンスターを倒していたが、どのモンスターも経験値は上がるしアイテムも落とすが肝心の現金を落とさない。  街の人から受けたクエストでも同じで、レベルは上がるが現金が入って来ない。時には報酬として新しい武器や防具をもらうこともあったので、古くなった武器や防具を売ろうとしたが、できなかった。王様曰く「モンスターが現金を持っているわけがない。野生動物が現金を持っていないのと同じ」「勇者の所持品は値段がつけられない品物だから誰も買い取れない」とのこと。  仲間もそうだ。道を歩いていたらいきなり剣士、魔法使い、弓使いの3人組が現れて「勇者の旅に同行したい」と半ば強引にパーティーを組まされた。しかも誰一人として現金を持っておらず、ましてや彼らはよく食べ、よく酒を飲んだ。(仲間の1日の食費3万~5万)その割に、戦闘になるとあっけなく倒されてしまうことも多く、勇者が教会に連れて行って復活させるということもあった。(1度の復活につき10万円)  そんな旅だったが、勇者は耐えた。魔王を倒すためだと自分に言い聞かせて、自分の食費(1日の食費100円~200円・日によってはなし)や宿代(仲間の宿代1人1万円・勇者は野宿)など、削れるところはひたすら削った。  ひたすら搾取され続けるだけの旅を強いられた結果、お金はなくなり、仲間もいなくなった。
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