二 鬼の相撲

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「……通常の物ならば良いのですが、狂っているもの。あるいは死んでいるものは決して獲らぬようにされよ」 「心得ました」  話をした長老の息子は他にも都の話を聞きたがっていた。しかし笙明は疲れたと言い、部屋で休ませてもらっていた。 「あ、ここにいた。もう」 「そんなに怒るな」 「だって」  不貞腐れている澪を彼は優しく腕に抱いた。 「どうした?村娘とおしゃべりは」 「みんな笙明様の事ばかり聞くの。面白くないわ」 「都の男が珍しいだけだ。さて、篠と龍牙はどうした」 「あ?そうだった!」    用事を思い出した澪は彼の手を引き庭に出てきた。そこでは篠と龍牙が汁を食べていた。 「遅いよ。先に食べています」 「ハハハ。仕事後は格別じゃ」 「はい、笙明様。澪の作った物です」 「それなら良い。ではいただこう」  夕刻の庭先で鍋の汁を食べていた一向に長老の息子が顔を出した。明日の相撲の話であった。  それは明日の相撲に篠と龍牙も参加の誘いであった。 これに気を良くした二人は食後、相撲を取り興じていた。笙明と澪は笑って見ていたが、彼は山からの嫌な気配を感じていた。 ……祭りの用意であるが、どこか奇妙だ。  村人達の楽しそうな夜の中、彼だけ一人、心を鎮めた夜を過ごしていたのだっ た。 ◇◇◇  翌朝。村の祭りが始まった。古老による鬼の面をつけた舞には驚いた笙明だったが、見事な動きに思わず都を忍ぶほどであった。そして相撲が始まった。村の広場に作られた土俵には次々と男達が戦い、それを見た女達は歓声をあげて行ったのだった。  この熱気を妖隊の一行も用意された席で見物していた。 「よし!俺も行く」
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