2話

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 楓は落ちた書類を拾い上げると、目を通すこともなく元の束の上に積み上げた。適当に置いたところを見ると、片付けをするつもりはさらさらないらしい。  「あれ、藤原さん、その荷物ひょっとして私宛?」  藤原の机の上の段ボールを指さしながら、楓がいった。  「ああ、そうだよ。君宛の荷物だ。本当なら君の机の上にあるべき物なんだけどね、どうして私の机の上にあるんだろうねぇ?」  藤原は書類が乱雑に積み上げられた机を見ながらわざとらしく語尾を上げた。一方机の所持者はというと、そんな小言は何所吹く風かと、段ボールを開けている。  「いやぁ、ホントになんででしょうね。私には皆目見当も付かないことでございますねー。」  「段ボールのゴミは散らかさないでくれよ。」  「分かってますよー。段ボールはリサイクルできるのでゴミではありません。」  「舞島ぁ・・・」  「冗談ですよ・・・。片付けますって」  しっかり段ボールと梱包材を机の上に散らかしたままだった楓は、上司の正当な圧に屈して、渋々段ボールごと抱えて自分の机に戻っていった。そして当然のことだが、置き場のない段ボールを抱えた楓は、可愛い後輩に助けを頼むことになった。
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