2020年 春

2/28
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
時は遡ること二か月前。 日本にある脅威がやってきた。 それは新型コロナウイルス感染症と呼ばれるものらしい。 私は医学的なことはさっぱりわからない。でも、子育てする中で、感染症なるものが如何に厄介かと言うのは嫌でも知っている。 とくに、冬場はあの厄介なウイルスに毎年気を揉み、子供達が感染しないように予防を講じているからだ。 でも、この新型は厄介なことに治療薬もなければ、予防するワクチンもなく、感染しても抗体がつくかさえ怪しいと言う。 最初はゾッとするほどの恐怖から、まだそれほど騒がれてもいないのに、学校を自主的に休ませようとしていた程だった。 母親という生き物は、自分がそうなってから感じるのだが、常に我が子に付き纏う不安やリスクについて神経をすり減らすように出来ているんだろうか? こうした情報には人一倍過敏になってしまっていた。 夫はといえば… そんなものはどこ吹く風。 いつも通りに営業で外回り、出張やらなんやら特別気を遣う様子もなく、普段通りの日常を過ごしていた。 私はあの頃、不安で毎日泣きそうなりながら、我が子の身や将来について案じていた。 そう、10年前のあの事故のときもそうだった。 あの頃は、まだ母ではなかったけど… 子供を産んで、母親になって我が子を育てるなんてあり得ないと思っていた。 なのに、2人も産んで姉妹を育てている。 だから、きっとこの不安にもいつか慣れてしまう日が、そんな日が来るだろうとは思っていた。 そして、今4月下旬。 人々の意識が漸く高まりつつある中、私はもう慣れつつあった。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!