気になるあいつの気になる子

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 教室のドアから誰かが入ってくるのを一瞬だけ目で捉え、ガヤガヤとした話し声で賑わうクラスの中央にゆったりと目を向ける。  友人たちと談笑する新城(しんじょう)真琴(まこと)を凝視するのは彼女と同じ二年五組の河村(かわむら)(たくみ)だった。  真琴は地味ではあったが、清楚で古風な控えめの美人、笑うと白い胡蝶蘭が揺れているように淑やかだった。長い黒髪はいつ見ても艶めいている。  巧が細い糸のような目をさらに細くして、真琴を舐め回すようにチェックしている様子を側で見つめる里中恵慈(さとなかけいじ)はため息を漏らした。 「お前、キモいよ」  恵慈の言葉に耳をヒクつかさせるも軽くあしらう。 「キモくはないだろ。バレないようにこっそり見てるだけだし」 「俺にバレてんじゃん」 「お前はいいの」 「何で新城さん?隣にいる仁田(にった)有希(ゆき)の方が絶対オススメだけど」 「仁田さんは確かにかわいいけど、由偉(ゆうい)が気にしてるのが新城さんだから」  由偉、とは二年二組の佐野由偉。巧と恵慈とは同じサッカー部員だった。
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