ガツンと一軒家!

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「この山が安かったのは実はもう一つ理由がありおる。」 「そ、そんな…止めろや急に面白くもねぇ…!」   旅番組と見せかけて心霊番組でした、と言いたい訳かっ!! いや、 いやいやいや!! 認めねぇ! 俺は絶対認めないぞ! 霊感は無いがホラーとか幽霊は怖すぎて一切無理だ! 信じる信じ無いかで言えば信じない方だが怖いので、何が何でも無理だ。 頼む、止めてくれ! 「霊はな、 居るんじゃよ。 信じるが、信じまいがの。 ほうら、言ったじゃろ? ここに来る途中、車の中で その昔、修学旅行生を乗せたバスが山で転落事故を起こした過去があるとのぅ」 彼は続ける。 四十代くらいの筈であるが、 語り口のせいか先程から何だか老人みたいに思えて来た。 「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ! 何も知らない!聞こえないっ!」 俺は耳を塞ぎ、頭を振って何もかも精一杯否定する。 「温泉に浸かるのを楽しみにしておった男児達があ… 死して尚、 毎晩秘湯の温泉に入りに来るんじゃあああああああ!!」 「ひぎゃあああああ!!」 仙人は俺の腕を掴み、迫真の顔で怪談を語る。 俺は怪談その物よりもこの男の顔が怖かった。 するとどこからか、 ヒタヒタ、ぴちゃぴちゃと 濡れた岩肌を打つ、 ちょうど小学五年生くらいの男児達の裸足の足音が木霊して来たではないか! 「ああああ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 助けてくれ助けてくれ!」 逃げ出そうにも脚がすくみ腰が抜ける。 動けたとて、一旦脱衣場に戻らなくてはならないが 既に御簾越しの脱衣場には白くぼやっとした 人型の影が揺らめいている。 温泉を待ち焦がれた男児達がぴょんぴょんと跳ね回り、お尻をふりふりさせているのだ! 俺は恐怖に震えて今にも失禁寸前だ。 「ああ、嫌だ嫌だ!怖い怖い怖い…!!」 俺は狼狽え、うろ覚えでお経を唱えた。 「あー、でもほら安心して下さい。 彼らは生前の記憶のまま死んだ事も気づいていないので外見は生きてる人間と変わりませんし 見えたとしても此方から手を触れる事も出来ませんし、彼らも別に我々に危害を加えて来ません」 「えっ…」 そこには 微かに白いモヤが掛かった裸の男児達が立っていた。 修学旅行生とあって、狭い露天風呂に100名程居て驚いたが しかし何度見返してもやはり只の男の子だ。 ちゃーんと付いている。 「いやね、最初は私も戸惑いましたよ、 でもねぇ見慣れて来ると何だかもうこれがたまらん訳ですよ!ぬふへへへ!」 仙人は蕩けた笑みを浮かべる。 男児達は先客である我々には目もくれず、 狭い露天で体を洗い合ったり比べっこしたりしているではないか! 「お前さん、カメラは持ってきているよな!?」 「いや、電池切れになったから車の中に置いて来た。 って言うか残念だが幽霊はカメラに映らない。心霊番組は全て偽物だ」 仙人はうなだれる。 抱きあって洗いっこする男児達を撮りたかったらしい。 「しかしまぁワシは満足だがね! 幽霊騒ぎで土地は安いし、野菜は収穫し放題だし温泉浸かり放題じゃし男児は居るし。 真に尊いばかりじゃわい!」 「ああ、これこそ正に 抱き合わせ販売!!」
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