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1通のメールがわたしの作家人生を変えた。
ネット小説を書き続けて10数年、未だ日の目を見ないわたしの作品たちが、
とうとうランキング上位に食い込むようになった。
とはいえ、それは実力というほどのことじゃない。
ただ、買ったのだ。その順位を。
そのメールは、少数の人にしか送られない特別なものだという。
初回は、現在の順位を問わず、
たった100円でTOP100位入りするというものだった。
100位どころか、かすりもしないわたしは、
ちょっと携帯のスタンプを買うくらいのつもりで入金した。
すぐにランキングに変動があり、83位に急浮上した。
すると、読んでくれる人が倍増し、
運営サイトからもお祝いのメッセージが届いた。
購入しただけなのだが、なんだか少し認められたような気がした。
それ以降もいろいろな作品を書いては見たものの、
順位は買わないと上位に入れなかった。
そのうち1,000円、3,000円と定期的に購入するようになり、
その都度ランキングは激しく変動したが、
高額になればなるほど、上位に君臨するのが安定していることに気付いた。
そのうちにこのサイトでは、多少名前の知れた作家の1人になった。
ランキングで常に上位の人の名前も記憶に残るようになり、
その人の作品を読みに行った。
金で買っている自分がこういうのもなんだが、
なぜこの人がこんな上位に居るのだろうと、
不思議に思うような作品も数多くあった。
まさかと思いその方々に聞いてみると、
実は、どのクリエイターも月に何十万もかけて貢献しているというのだ。
なんだが少し馬鹿馬鹿しくなったとき、
運営サイトからのお知らせがあった。
~ランキング不具合のお知らせ~
いつもダークスターをご利用いただきありがとうございます。
今月から発生した不具合につきまして、下記の通りご報告いたします。
事象:
新規購入されたランキングが反映されない
発生日時:
●月×日~●月△日
対応:
不具合期間中に表示されなかった作品について、
現在反映作業をおこなっております。
恐れ入りますが、表示の正常化まで今しばらくお待ちください。
この度は皆さまにご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。
引き続き、ダークスターを何卒よろしくお願いいたします。
こんなに堂々と、
ランキングが購入しているものだと公表していいのだろうか。
何かの間違いかもしれないと運営に問い合わせをかけたが、
実は利用規約に記載してあるという。
※当社のランキングは、当社への貢献度によって上下いたします。
作品に人気があるものは、バナー広告の収入が入る為必然的に上位に、
人気のないものは購入してもらえれば上位に、
さらには人気作家が安定のためにランキング購入し、
不動の地位を確立しているときく。
これではもう太刀打ちできるようなものではない。
文才はあまりないが継続利用している優良顧客を選び、
承認欲求を満たすような有料サービスを提案する。
わたしは肩を落とすと同時に、静かにパソコンの電源を落とした。
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