プロローグ

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「ねえ、お母さん。入学式、俊太やおばさんとあんまり馴れ馴れしくしないでよ?」 今日は高校の入学式。 新しい制服に袖を通し、後は髪の毛を整えて家を出るばかりだった。 家を出る前にこれだけは言っておかなければと、パールのイヤリングを着ける母に忠告した。 「なんでよ?」 「なんでも」 私は口調を強めて言った。 そうする間にもリビングにインターホンの音が鳴り響いた。 「ああ、来たみたいね。行くわよ」 母はソファの上から卒業式以来のセレモニーバッグを手にして私を振り返った。 「仲良くするなもなにも、行くんだから無理な話ね」 母はそんな風に呑気な返事を寄こした。 今日、私の反対を押し切って俊太と俊太の母親と一緒に入学式に向かうことはわかっていた。 わかっていたけどそれでも言わずにはいられなかった私の気持ちなんて… きっと母にはわかるはずがない。
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