1 川田

1/11
323人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

1 川田

コンビニでアルバイトをしようと思い、面接に行った。ちょっと緊張したが、店長が優しげなおじさんで、安心した。 家から自転車で15分。そこそこ近くて、そこそこ遠い。いい距離だと我ながら思う。早速明日から、夕方のシフトに入れて貰えた。ラッキー。 翌日の夕方、制服のシャツを着て店に出た。 「あれえ?へえ~目付きわるいねえ、君」 やけに整った顔の先輩に絡まれた。アンラッキー。 「よろしくお願いします」 「はいはいよろしくね~」 フリーターか、20代…前半?大学生だろうか。 「坂上圭でえす、圭ちゃんって呼んでねえ?」 「とりあえず、仕事教えて貰えますか?坂上さん」 「うん、圭さまでもいいよ~」 なんだか軽い人だな。金髪だし。 「とりあえずレジしてえ、品だしする~?」 「はい」 「川田くんさあ、なんか真面目~?」 確かに。よく堅物と言われる。 「川田くんさ~、趣味なにい?」 …趣味。 「読書とか、ですかね?」 「うわあ、見た目厳つくて怖そうなのにい、ギャップ萌えかあ」 失礼な人なのか。あまり関わらずにいたいな、とちょっと思ったら、 「川田くんさあ、オレみたいの…キライ?」 たれ目を細めながら言われ、少し驚いた。表情に敏感な人なのかも知れない。 「嫌いではなく、苦手ですね。周囲にはいないタイプでしたので」 正直に言ったら、雰囲気が和らいだ。少しホッとして、息を吐き出す。 「そっかあ、オレここ週三だからさあ、まあちょくちょく会うかもねえ、仲良くしてね~」 「はあ、よろしくお願いします」 よく分からない人だ。まあ、世の中色んな人がいるからな。 アルバイトにもだいぶ慣れたが、慣れないのは坂上さんだ。何故だかあれから、シフトがよく合う。 「なんかさあ、オレ友くんと運命感じちゃうよ~。シフト全部さあ、友くんと被ってんだよねえ」 それは、確かにすごい運命だと思い、苦笑する。 「坂上さん、友くんは…ちょっと」 「友道くんでしょお?あ、ともみっちゃんがいい?」 究極…。 「友道では駄目ですか」 「やだなあ、恋人みたいじゃんかあ」 ケタケタと笑いながらも、坂上さんは手を止めない。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!