第十章 心中立て 五

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 俺の給料は、元妻がほぼ全額押さえてしまい、お小遣い程度しかない。地下社会で稼いでいる金があるが、使うと本村が怒る。 「この時計は、金額ではなく、この作家を口説けた熱意というのが凄いのですよ」  本村なりに、秋鹿の気持ちを察して、手を打っているらしい。 「しょうがない。地下社会から送金。山科、部下と寿司を食べに行くから、頼む」 『無駄遣いしないように!』  山科ガメッセージを添えて、金を送金してきた。無駄遣いするなと言うが、俺は子供ではない。 「……マグロ一匹で寿司を作るつもりですか……」 「…………確かに、金額の桁が違っているな」  この金額があれば、全員で寿司が食べられる。 「秋鹿、山根、寿司を食べにいこう」 「はい!」  市子は育児休暇を取っているので、今は家にいるらしい。市子がいたら、本当にマグロを一匹食べそうなので怖い。 『こわいこと』 了
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