第2章

12/36
153人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
ふ…ふふ… 「…!」 すると突然、彼の耳に女性の声が響き渡る。 雨羽は、透かさず背後を振り向いた。 しかし、そこには誰もいなく、広い灰色のアスファルトだけが広がっている。 「…ここにものか。」 誰もいないはずの場所を見つめ、眉間に皺を寄せる。 不気味な女性の声。 先程の笑い声はどこか楽しんでいるように聞こえた。 「一応、にも言っておくか。」 雨羽は、制服のズボンのポケットからスマホを取り出す。 画面に文字を打とうとした、その時だった。 屋上のドアが不意に開いたのだ。 「あぁ~っ、やっと外に出られた~。あの職員室、凄く暑苦しいんだよ全く。せめて、机と机の間を空けてほしいもんだぜ。」 ぼさぼさ頭を掻きながら屋上に入って来たのは、依子の担任の寺岡だった。 「ん?」 すると、寺岡は目の前に立っている雨羽に気が付く。 寺岡と目が合った雨羽は、彼を軽く睨みつけた。 「あれ?確かお前…先月転校してきた雨羽だよな?」 「…だったら何だ?」 寺岡から視線を外し、雨羽は答える。 面倒な奴に見られてしまった。 心の中で大きなため息を漏らした。 寺岡は、素っ気なく答える雨羽に躊躇わず歩み寄る。 「お前、今授業中だろ?何でここにいるんだ?」 「…お前こそ、何しにここに来たんだ?」 「おい。いくらお前がイケメンだからって、教師に向かって「お前」呼ばわりは聞き捨てにならないぞ。」 寺岡は、こめかみに青筋を立てる。 いくら生徒に尊敬されていなくても、一応教師だ。 彼にも教師としてのプライドはあった。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!