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ふ…ふふ…
「…!」
すると突然、彼の耳に女性の声が響き渡る。
雨羽は、透かさず背後を振り向いた。
しかし、そこには誰もいなく、広い灰色のアスファルトだけが広がっている。
「…ここにもいるのか。」
誰もいないはずの場所を見つめ、眉間に皺を寄せる。
不気味な女性の声。
先程の笑い声はどこか楽しんでいるように聞こえた。
「一応、アイツにも言っておくか。」
雨羽は、制服のズボンのポケットからスマホを取り出す。
画面に文字を打とうとした、その時だった。
屋上のドアが不意に開いたのだ。
「あぁ~っ、やっと外に出られた~。あの職員室、凄く暑苦しいんだよ全く。せめて、机と机の間を空けてほしいもんだぜ。」
ぼさぼさ頭を掻きながら屋上に入って来たのは、依子の担任の寺岡だった。
「ん?」
すると、寺岡は目の前に立っている雨羽に気が付く。
寺岡と目が合った雨羽は、彼を軽く睨みつけた。
「あれ?確かお前…先月転校してきた雨羽だよな?」
「…だったら何だ?」
寺岡から視線を外し、雨羽は答える。
面倒な奴に見られてしまった。
心の中で大きなため息を漏らした。
寺岡は、素っ気なく答える雨羽に躊躇わず歩み寄る。
「お前、今授業中だろ?何でここにいるんだ?」
「…お前こそ、何しにここに来たんだ?」
「おい。いくらお前がイケメンだからって、教師に向かって「お前」呼ばわりは聞き捨てにならないぞ。」
寺岡は、こめかみに青筋を立てる。
いくら生徒に尊敬されていなくても、一応教師だ。
彼にも教師としてのプライドはあった。
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