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口づけ
「ねぇ、もしかしてずっと目を開いていたの?」
彼女は不満げに眉をつりあげる。
彼は二人を繋いでいた細い雫を美味しそうに飲みほした。
彼女は彼を鋭い眼差しで睨むが、頬に帯びた熱は隠しようがない。
それを目の前の人は分かっているのだろう。
自分にしか見せない極上の笑みを見ていれば否応なしに思い知らされる。
彼は彼女の思いを察して、内に秘めた愛情を吐露する。
「当たり前だろ? 俺で感じている顔を見過ごすわけない」
甘やかな眼差しでそう言われたら、口を強く引き結ぶしかない。
それなのに、目の前の人の甘みがまた欲しくなるのは、自分のタガが外れてしまっているのせいだろうか。
「ねぇ、もう一回」
いいよ、とも言われず引き寄せられる体。
交わされる視線の強さの意味を彼女は知っている。
それをどこか悔しく思いながらも、彼女は再び目を閉じてしまった。
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