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「お代官様、憎き隣の藩に一矢報いる方策が出来あがりました」
「おお、それは良い知らせじゃ。して、劉輝よ、どのような策じゃ?」
ひそひそ。
「おお、それは実におもしろい。お主も悪い奴じゃのお。やって見せよ」
「ははあ」
数年後。
「隣の藩は、まんまと罠にひっかかっております」
「そのようじゃのお。藩主も美しい国だの戯けた金看板を掲げ、旅籠や街道の整備に莫大な金を注ぎ込んでおるようじゃの。我が藩の民が突然訪れないようになったら、即死よの」
「まさに」
「そろそろ関所を封鎖する頃合いではないのか?」
「はい。それですが、一方的に関所を封じては、さすがに隣の藩主も黙ってはいないと思い、合理的な策を思いつきまして」
「ほう。それは?」
「コロリでございます」
「コロリ、とな?」
「はい、コロリでございます。肺の臓の病を誘引する病の種でございます」
「ほう。して?」
「これに罹れば、大勢の人が死にます」
「それを我が藩の民に撒くのか?」
「多少、我が藩も痛みを伴いますが、むしろその方がもっともらしく見え、他藩からの非難も軽減されようかと」
「なるほど! さすが我が国最高の軍師!」
数か月後。
「首尾は上々でございます」
「我が藩最大の祝い日洲節を狙っての流布とは、お主も悪人よの」
「隣藩のみならず、全国土に流行いたしましょう」
「うむ、これが上手くゆけば、天下は我が物。八紘一宙と唱えおった隣藩の向こうを張った一球一体の大きな弾みになろうゾ」
「まさに」
数週間後
「覆面は出来たか?」
「大量に備蓄しております」
「一球一体戦略に欠かせぬ、遠州地域への勢力拡大にも大きな弾みとなりましょう」
「むはは。覆面数億枚など、実に安い出費じゃ。それで、恩を着せられ、何万倍もの利益が得られよう」
ワハハハハハ。
ワハハッハッハハハッハッハ。
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