新型コロリ外伝

「リューキサーン。ワタシハ少シ困ッテイマース」
「何だ、藪から棒に人の家に忍び込んできて！」
「ワターシハアナタ二要ラナイ事ヲツイ言ッテシマッタヨウデース」
「何の話だ？」
「数年後二大キナ戦争ガ起ルト」
「……」
「ダカーラ、アナータハソレヲ回避スル為、風朕ヲ唆シ、宇久来那藩二侵攻サセタ」
「しらばっくれても無駄なようだな」
「ソウデース、藩ノ者ニハ一球一体ヲ進メルフリヲシテ、裏デハ更二逆ナ事ヲシテイル。私ハ密書ヲ手二入レマーシタ」
「私が風朕に送った密書か？」
「アナータハ実二面白イ人デースネ。戦争ヲ唆シテオイテ、今度ハ停戦話ヲ持チカケル」
「よもやここまで戦が長引き、これほど多くの人命が奪われるとは思わなかったからだ」
「数カ月前、アナータノ藩主ガ風朕ト会談シマーシタネ。シカーシ、風朕ハ彼ノ提案二首ヲ縦二振ラナカッタ。何故カ分カリマスカ？」
「我が宙華藩に利するところが多く、模巣鍬藩には利が少なかったからでは？」
「ソレーモアリマス―スガ、彼ハアナタ方ノ地方ノ人種ガ好キデハナイノデース」
「そうだな。我々のような人種に従うのは恥とでも思っているようだな。経済的友好藩、軍事的僚友と言いながら、腹の底では、我々を見下している」
「ダカラ、アナータハ密書二記シマーシタ。我が宙華藩の言いなりになりたくないのなら、ならない方法が一つあります。それは、世界を味方につけることです、と」
「私の密書を本当に手に入れ、読んだようだな」
「ソウデース。アナータニハ、全ク驚カサレマシ―タネ。戦ヲケシカケテオイテ、今度ハ掌ヲ返シタカノ如ク、和平案ヲ独自二提案スル」
「彼が誠心誠意、詫びれば諸藩は彼を許すかもしれない」
「泣カセル台詞マデアナータハ用意シタ。
曰く
私は模巣鍬藩の藩主として、模巣鍬藩の民の幸せを常々考えてきた。しかし、今回はその民の幸せを願うあまり、宇久来那藩の人々の幸せに目が行かなかったようだ。私は、ここにその過ちを正そうと思う。
本日、模巣鍬藩の全軍を撤退させる。そして宇久来那藩の復興に全力で対応する。この戦で亡くなった人々に対し、心から謝罪するとともに補償を行うことを約束しよう。
私の首を刎ねてもいい。腹を裂いてもいい。しかし、それでは、亡くなった人、壊れてしまった領土に、何の益ももたらさない。
どうか、宇久来那藩のみなさん、私に贖罪の時間を与えてはくれないだろうか？　この命のある限り、私は天下の平和のために全力を尽くそうと思う。そのことを約束する。
ブラヴォー！
キット模巣鍬藩ノ民ハ涙スルデショウ。宇久来那藩ノ人々デサエ、涙スルカモシレマセーンネ。
ソシテ最後ノ駄目押シガコレダ。
新しい時代が到来し、あなたは歴史に名を残すでしょう」
「私はそう信じているし、私自身の贖罪でもある」
「ソンナニ世ノ中ハ、甘クアリマセンヨ」
「分かっている。しかし、賭けだ。どちらに転んでも、戦は終わる」
「ナールホド、ソウナルカモ知レマセンネ。ソウデナケレバ、世ノ破滅シカアリマセンカラネ」
「どうか、妨害しないでくれ」
「様子ヲ見ヨウ、ト言ウノガ我ガ結社ノ判断デース」
「かたじけない！」
「サテ、ドウ転ビマスカネ？」