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紫陽花苑の中から、境内社のお社が見える。それがまた、絵になっている。
私はスマホを取り出すと、数枚写真を撮った。
「明日、お店で、颯手さんに見せよう」
前に来た時はあまり咲いていなかったとのことなので、満開の様子を教えてあげたいと考えていると、
「ちょっと貸せ」
誉さんが私の手からスマホを取り上げた。
「誉さん?」
私のスマホで何をするつもりなのだろうと首を傾げたら、誉さんはレンズをこちらに向け、素早く写真を撮った。ニヤリと笑う。
「油断していただろ」
「ほらよ」と返されたスマホには、紫陽花を背に、きょとんとした顔の私が写っている。
(へ、変な顔してる……!)
自分のマヌケ顔にショックを受け、
「勝手に撮らないでくださいっ」
バシンと腕を叩くと、誉さんは声を上げて笑った。
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