君の耳になりたい

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君の耳になりたい

「最近気に入った歌のリストを作ってるからよく聴く歌教えて」 君にそう聞くと  君は少し考えて答えた 「いや、特にこれといってないかな」 私は少し残念がって見せる 実はね 本当はリストなんて作ってない ただ知りたかっただけ 君の身体の中に響く歌 君の想いの中に入る歌 君の心を動かす歌 君の好きな歌 なんとなく照れくさくてストレートに聞けなかったから  つい遠回しに聞いたんだ すると君は言った 「そのリスト俺も聴きたい。できたらシェアさせて」 突然そんな心浮き立つ提案されたら 嬉しすぎて舞い上がってしまうじゃない 君と同じ歌を聴きたいと思っていた 特にないと言われて諦めたのに 次の瞬間 その願いは思いがけない方向から叶った しかも後から 「この歌知ってる?聴いてみたらよかったよ」 なんて言って教えてくれるなんて反則でしょ どれだけ胸を高鳴らせたら気が済むの 私は君になれない 君も私にはなれない だからこそ同じ歌を聴いて  同じ気持ちに浸らせて欲しい その時だけは 繋がっている気持ちになれるから 君の耳になれた気がするから イヤホンをひとつずつして 隣にいる気持ちになれるから
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